東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1756号 判決
当審における被控訴人らの本案前の主張1の事実は、当事者間に争いがない。右事実によれば、控訴人と被控訴人大塚清江間において、控訴人の同被控訴人に対する訴を取下げる旨の合意のほか、控訴人の被控訴人遺言執行者に対する訴をも取下げる旨の合意が成立しているのであるから、この合意の成立によって、控訴人の被控訴人大塚清江に対する訴についての権利保護の利益が失われるにいたったことは、いうまでもないところである(最高裁判所第一小法廷昭和四四年一〇月一七日判決、民集二三巻一〇号一八二五頁参照)のみならず、控訴人は、右のように被控訴人大塚清江に対し、第三者である被控訴人遺言執行者に対する訴をも取下げる旨約したものであるところ、被控訴人遺言執行者は、当審における本件の第一回口頭弁論期日において右合意の存在を主張し、これを自己の利益に援用していることが弁論の全趣旨によって明らかであるから、右の援用によって、控訴人と同被控訴人間においても訴取下の合意が成立したと同一の効果が発生するにいたった(民法五三七条参照)というべきであって、控訴人は、被控訴人遺言執行者に対する訴についても権利保護の利益を喪失するにいたったものというほかない。
(石川 寺沢 原島)